小売店本部への効果的な営業術:メーカー営業担当者のための成功の秘訣

小売店本部商談

小売業界は、インターネットの普及やデジタル技術の進歩、さらには消費者ニーズの多様化や市場競争の激化により、かつてないスピードで変化し続けています。
消費者は高品質でデザイン性の高い商品を求める一方で、価格にも敏感であり、さらには環境への配慮や社会的な責任を果たす企業姿勢にも注目しています。
このような複雑な市場環境下で、自社の商品を小売店の店頭に並べ、継続的に売上を確保するためには、小売店の本部、特に商品選定を行うバイヤーとの強固な信頼関係を築くことが不可欠です。

そこで、メーカーの営業担当者として、どのように効果的な営業を行い、小売店本部との関係を深めていくべきか。本コラムでは、そのための具体的なコツや成功の秘訣を、事例や具体例を交えながら詳しくご紹介します。 

目次[非表示]

  1. 1.秘訣①:徹底した事前準備
    1. 1.1.企業情報の収集
    2. 1.2.市場動向の把握
    3. 1.3.店舗訪問と現場観察
  2. 2.秘訣②自社商品の強みと相手企業のニーズをマッチングさせる
    1. 2.1.USP(Unique Selling Proposition)の明確化
    2. 2.2.相手の課題への対応策
    3. 2.3.成功事例の共有
  3. 3.秘訣③データとエビデンスに基づいた提案資料の作成
    1. 3.1.市場分析データの提示
    2. 3.2.商品の実績データ
    3. 3.3.ROI(Return on Investment)の明確化
  4. 4.秘訣④相手視点に立った提案:Win-Winの関係を目指す
    1. 4.1.利益共有の提案
    2. 4.2.定期的な進捗確認
    3. 4.3.新情報の提供
  5. 5.秘訣⑤法令遵守と倫理的な営業活動
    1. 5.1.コンプライアンスの徹底
    2. 5.2.透明性のある取引
    3. 5.3.情報管理の徹底
  6. 6.まとめ|ポイントを押さえて、効果的な商談を

秘訣①:徹底した事前準備

営業の成功は、事前準備でほぼ決まっていると言っても過言ではありません。
そして、充実した事前準備を行うためには、まず何よりも相手企業を深く理解することが欠かせません。相手企業のビジネスモデルや経営戦略、そして現在直面している課題や目標を的確に把握することで、提案内容の精度が高まり、商談の成功率が飛躍的に向上します。
そのために行うべきことのおすすめは下記の3つです。

企業情報の収集

小売店の公式ウェブサイトを詳細に閲覧し、企業のビジョンやミッションステートメント、さらには経営戦略や中長期経営計画を把握します。
例えば、ある小売店が「地域密着型のサービスを通じて、地域社会に貢献する」というビジョンを掲げている場合、自社製品がどのように地域社会に貢献できるかを提案に織り込むことができます。
また、年次報告書や株主向け資料を読み込み、業績動向や投資領域、新規事業計画などもチェックしましょう。さらに、プレスリリースやニュースリリースを通じて、新規出店計画や店舗リニューアル情報、新たな取り組み(例えば、ECサイトの強化やデジタルトランスフォーメーションの推進など)を把握することも重要です。

市場動向の把握

業界誌やマーケットリサーチ会社が発行する市場調査レポートを活用して、小売業界全体のトレンドや、特に相手企業が属するセグメント(例えば、食品スーパー、ドラッグストア、専門店など)の動向を理解します。これにより、相手企業が直面している市場環境や競合他社の動向、消費者の購買行動の変化を把握することができます。
例えば、近年の健康志向の高まりによりオーガニック食品の需要が急増している場合、自社が提供するオーガニック製品の価値を強調できます。

店舗訪問と現場観察

可能な限り、実際に小売店の店舗を訪れ、現場の状況を観察することは非常に有益です。
店舗の売り場レイアウトや商品陳列方法、プロモーションの実施状況、来店する顧客の年齢層や購買動向、さらにはスタッフの接客態度やオペレーション手順などを注意深く観察します。
競合製品についても、どのように陳列されているか、どのようなプロモーションが行われているかを把握することで、自社製品の提案に具体性と説得力を持たせることができます。

例えば、休日に店舗を訪れた際、家族連れの顧客が多く、健康志向の商品がよく売れていると感じた場合、自社の健康食品を家族向けにアピールするプロモーションを提案することが考えられます。また、陳列棚のスペースが限られている場合には、スペース効率の良いパッケージデザインや陳列方法を提案することも有効です。


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秘訣②自社商品の強みと相手企業のニーズをマッチングさせる

次に、商談の成功に欠かせないのは、商談におけるストーリーをしっかりと設計することです。
ただ単に自社の商品について紹介するだけでは、バイヤーの心を動かすことは難しいでしょう。重要なのは、自社商品の特長や強みを、いかに相手のニーズや課題解決に結びつけるかです。その際には、以下の3つのポイントを意識すると、効果的なストーリーが設計しやすくなります。

USP(Unique Selling Proposition)の明確化

まず、自社商品の市場における競争優位性や、他社にはない独自の価値を整理します。
USPを明確にすることで、バイヤーに対して自社商品の差別化ポイントを強く訴求できます。
​​​​​​​例えば、「当社の製品は、独自開発の技術により、従来品よりも30%のエネルギー効率向上を実現しています」や、「環境に配慮したエコな素材を使用し、SDGsの目標達成に寄与する製品です」など、具体的な特徴を挙げます。この際、技術的な専門用語だけでなく、バイヤーが理解しやすいように平易な言葉で説明することも重要です。

相手の課題への対応策

相手企業が抱える具体的な問題点を踏まえて、自社商品がそれらの課題解決にどう貢献できるかを示します。
例えば、相手企業が「新規顧客の獲得に苦労している」という課題を持っている場合、自社商品の特徴が「若年層に人気のあるデザインでSNSでも話題性が高い」といった点を強調し、「貴社の客層拡大に貢献できます」と提案します。また、「売上が低迷しているカテゴリーのテコ入れが必要」といった課題に対しては、自社商品の導入がどのように売上向上につながるか、具体的なシナリオを提示します。

成功事例の共有

他の小売店での導入事例や成功ストーリーを紹介することで、提案に説得力と信頼性を持たせます。
例えば、「XXスーパーでは、当社商品を導入いただいた結果、同カテゴリー商品の売上が前年比150%を達成しました」といった具体的な数値を提示します。また、実際の店舗での陳列写真や、消費者からのポジティブなフィードバックを資料に盛り込むことで、バイヤーに具体的なイメージを持ってもらうことができます。可能であれば、成功事例として取り上げた小売店からの推薦状やコメントを添えると、さらに信頼性が高まります。

秘訣③データとエビデンスに基づいた提案資料の作成

商談のストーリーがしっかりと設計できたら、次に着手すべきはバイヤーに対して説得力のある提案資料を作成することです。提案資料は、バイヤーの心を動かす極めて重要なツールであり、見やすく整理された資料は商談の成功に大きく寄与します。
日々多くの商品提案を受けるバイヤーの納得感を得るためには、主観的な意見や感覚ではなく、客観的で定量的なデータとエビデンスに基づいた資料が求められます。

資料にエビデンスとして盛り込みたい重要な項目を以下に詳しく説明します。

市場分析データの提示

自社製品が属する市場の規模や成長性、そして消費者の購買動向などを、信頼性の高い調査データを用いて説明します。
例えば、「当該市場は過去5年間で年平均10%の成長を遂げており、2025年には市場規模が〇〇億円に達すると予測されています」といった情報を提示します。
また、消費者アンケート調査の結果を用いて、「消費者の〇%が健康志向の商品を求めており、特に20代から30代の若年層でその傾向が顕著です」といった詳細な分析を提供します。これらのデータは、信頼できる公的機関や調査会社の情報を引用することで、バイヤーに対する説得力が増します。

►ポイント:図表の活用

市場規模の推移を示す折れ線グラフや、消費者ニーズの割合を示す円グラフなど、視覚的に情報を伝えることで、理解を促進します。

商品の実績データ

自社商品の過去の販売実績や、顧客満足度調査の結果、リピート購入率など、自社商品の強みを裏付ける具体的なデータを提示します。
例えば、「当社製品は発売初月で10万個を販売し、同カテゴリー内でトップシェアを獲得しました」や、「顧客満足度調査では、回答者の90%が『非常に満足』と回答し、リピート購入率は80%に達しています」といった具体的な数字を挙げます。また、SNSでの話題性やメディアでの紹介実績なども資料に加えることで、製品の人気や注目度をアピールできます。

ROI(Return on Investment)の明確化

小売店が自社商品を取り扱うことで、具体的にどの程度の売上増加や利益率向上が期待できるかを示します。
例えば、「当社製品を導入いただくことで、店舗あたり月間平均で〇〇円の売上増加が見込まれます」や、「同カテゴリー平均利益率が5%であるのに対し、当社製品は10%の高利益率を誇ります」といったデータを提供します。さらに、初期投資額と予測される利益を比較したROIの計算を提示することで、投資対効果を明確に伝えます。
例えば、「初期導入コストは〇〇円で、3ヶ月で投資回収が可能です」といったシミュレーションを行います。

これらのデータを、わかりやすいグラフやチャート、表などを用いて視覚的に示すことも重要です。直感的に理解できる資料作成を心掛けましょう。

秘訣④相手視点に立った提案:Win-Winの関係を目指す

営業活動においては、自社の利益を追求するだけでなく、相手企業の成功にも貢献する姿勢が求められます。相手のニーズや課題を深く理解し、互いに利益を生み出すWin-Winの関係を築くことが、長期的なビジネスパートナーシップの鍵となります。
以下に、そのための具体的なアプローチを詳しく解説します。

利益共有の提案

共同でキャンペーンや販促イベントを実施することで、相手と一緒に利益を生み出す取り組みを提案します。例えば、「共同でポイントアップキャンペーンを実施し、購入者に特典を提供する」「SNSを活用した共同プロモーションで互いのブランド価値を高める」などの具体的な施策を提案します。これにより、相手も自社も利益を享受できる関係性を築くことができます。
また、販促ツールや店頭ディスプレイの提供、スタッフへの商品研修の実施など、相手の販売活動をサポートする施策を提案することも効果的です。

定期的な進捗確認

提案内容に対するバイヤーのフィードバックや検討状況を、適切なタイミングで確認します。
ただし、相手の負担にならないよう、頻度やタイミングには注意が必要です。
例えば、商談後3日以内にお礼のメールを送り、その際に「ご検討中の中、ご不明な点やご質問がございましたら、いつでもご連絡ください」と伝えます。その後、1〜2週間程度の間隔をあけて、「先日のご提案につきまして、追加の資料や情報が必要でしたらお知らせください」といったフォローを行います。また、相手のスケジュールや検討プロセスを事前に確認しておくことで、適切なタイミングで連絡を取ることができます。

新情報の提供

業界の最新情報や市場トレンド、自社の新商品情報など、相手にとって有益な情報を継続的に共有します。
例えば、「最新の市場調査レポートで、〇〇商品の需要が昨年比20%増加しているとのデータがございましたので共有いたします」といった情報提供を行います。また、自社で新商品の開発や改善があった場合には、「新たに〇〇機能を追加した商品がリリースされました。貴社のニーズに合致するかと思い、ご紹介させていただきます」と積極的に情報を伝えます。
これにより、相手にとって自社が信頼できる情報源であることを示し、商談の継続性を高めることができます。

秘訣⑤法令遵守と倫理的な営業活動

信頼されるビジネスパートナーであるためには、法令遵守と高い倫理観を持った営業活動が不可欠です。不正な行為や倫理に反する行動は、短期的な利益をもたらすことがあっても、長期的には信頼を失い、ビジネスの継続を困難にします。以下に、そのための具体的なポイントを詳しく説明します。

コンプライアンスの徹底

営業担当者として、関連する法規や業界ルールを正確に理解し、遵守することは基本です。
例えば、独占禁止法や不当景品類及び不当表示防止法、個人情報保護法など、営業活動に関わる法令については、定期的に研修を受け最新の情報を把握します。
不正な取引や過剰な接待、賄賂などは厳禁であり、企業の内部規定にも目を通しておきましょう。
また、取引先の内部規定や倫理基準を尊重し、相手の立場を考慮した行動を心掛けます。

透明性のある取引

価格設定や契約内容において、透明性を確保し、公正な取引を行います。
契約内容は明確に書面で交わし、口頭での約束や曖昧な表現を避けます。
例えば、価格交渉においては、適正なコスト計算や市場価格を基にした根拠を提示し、納得感のある提案を行います。また、特典やインセンティブを提供する場合も、公正な基準に基づき、他の取引先との整合性を保つように注意します。

情報管理の徹底

取引先から得た情報や機密事項を適切に管理し、外部への漏洩を防ぐことは、信頼関係を維持する上で極めて重要です。
例えば、商談で知り得た相手企業の戦略や計画を第三者に漏らさない、社内でも情報共有は必要な範囲にとどめ、情報セキュリティポリシーに従います。また、パソコンやスマートフォンのセキュリティを強化し、データの紛失や不正アクセスを防止するための対策を講じます。

このように、法令遵守と倫理的な営業活動を徹底することで、取引先からの信頼を得ることができ、長期的なビジネスの発展につながります。

まとめ|ポイントを押さえて、効果的な商談を

小売店の本部に対して効果的な営業を行うためには、事前準備から提案、フォローアップに至るまで、一貫した戦略的なアプローチと細やかな配慮が不可欠です。相手企業のビジネスモデルやニーズ、課題を深く理解し、自社商品の価値を的確かつ具体的に伝えることで、相手の信頼を得ることができます。
また、提案内容を相手視点でカスタマイズし、Win-Winの関係を築くことで、双方にとって有益なパートナーシップを構築することができます。

メーカーの営業担当者として、自社と小売店双方の成長に貢献できるよう、日々の営業活動にこれらのコツを取り入れてみてください。継続的な努力と誠実な姿勢は、必ずや成果につながります。顧客との信頼関係を深め、共に発展していくために、一つ一つの商談や提案を大切に、チャレンジを続けていきましょう。

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