インサイドセールスとフィールドセールスの分業とは?それぞれの特長や役割から解説
近年、新型コロナウイルスの影響で非対面での働き方が浸透してきましたが、営業においても、非対面で行われる「インサイドセールス」が注目されるようになりました。
本コラムでは、そのインサイドセールスと従来のフィールドセールスの分業について、それぞれの役割から解説していきます。
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営業で重要なこと~「買わない理由」~
皆さんは「営業」という言葉を聞いてどのようなイメージを持つでしょうか?営業をする側も、される側もポジティブなイメージはなかなか持たないのではないかと思います。営業活動、特にアウトバウンドなどの新規営業においては、「買おうと思っていない相手に買ってもらう」活動であると言えます。この言葉からでも伝わるように、買おうと思っていない人に買ってもらうことは至難の業です。営業活動のなかで「買ってもらえなかった」ケースの方が圧倒的に多いのは必然的なことなのです。
そこで重要となるのは、「買わない理由」です。買う理由ももちろん重要ですが、その中にはたまたまタイミングが良かった場合や、営業の人と馬が合ったから買った等のラッキー的要素も含まれています。しかし、買わない理由には、他の人にも共通するなにかがあるかもしれません。その理由を切り返し、活用イメージを持ってもらうことが、営業プロセスにおいて重要なことであると言えます。
これを踏まえたうえで、インサイドセールス・フィールドセールスそれぞれについて解説していきます。
インサイドセールス・フィールドセールスとは?
インサイドセールスの特長
インサイドセールスとは、営業手法の1つであり、冒頭でも述べたように非対面での営業活動のことを指します。電話やメール、WEB会議ツールなどを活用し、多くの見込み顧客とコミュニケーションをとっていきます。
非対面であることによって、移動時間がかからないため、1日に多くの顧客にアプローチできることがメリットと言えます。逆に、顔が見えない電話やメールでは顔が見えないコミュニケーションになるため、先方の表情が伺えないことや信頼を得にくいことがデメリットと言えます。
●テレアポとの違い
架電営業という意味で、テレアポと混同されることがありますが、目的や効果測定の期間において区別することができます。インサイドセールスの目的は、「顧客育成」「アポイントの獲得」です。本来は通常の営業と同様に、成果の獲得が目的ではありますが、電話だけで成約まで達成するケースが少ないため、長期的に顧客との関係構築を目指していきます。
それに比べて、テレアポの目的は「アポイントの獲得」のみです。さらに、テレアポではその場の架電によって成果が決まることが多いため、短期において効果測定を行うことが一般的とされています。
フィールドセールスの特長
フィールドセールスとは、営業手法の1つであり、顧客と対面にて営業活動のことを指します。顧客または見込み顧客を訪問し、対面にて商品やサービスの提案、商談を進めて成約まで繋げます。多くの企業において、営業スタイルの基本として取り入れられているのが、このフィールドセールスと言えます。
フィールドセールスの特長は、顧客と直接対話を行うことで顧客の課題やニーズを深く理解し、感情を読み取りながら説得を行なえる点です。
それによって、非対面の営業スタイルと比べて、より顧客に沿った提案ができることや、信頼を得やすいことがメリットと言えます。逆に、商談への移動に時間を取られてしまうことで、1日のアプローチ件数が少なくなってしまうことや、交通費などのコストがかかってしまうことがデメリットと言えます。
近年ではインサイドセールスが導入され始めたことによって、フィールドセールスの在り方や役割にも変化が生じています。
インサイドセールスが注目されるようになった背景
なぜ、インサイドセールスが注目されるようになったのか、その背景は下記の3つであると言えます。
■コロナウイルスの影響
大きな背景として、やはり新型コロナウイルスが挙げられます。新型コロナウイルスは各業界のビジネスに大きな影響を与えました。対面が当たり前だった営業活動においても、人との接触を避けるべく、非対面でも新規の顧客を獲得できる方法、顧客との関係構築を保つことが出来る方法を考えることが求められたのです。
■営業に対する意識の変化
コロナ禍においてリモートが主流になりましたが、それによって商談を行う際の移動時間や労力を無駄と感じる方が増えてきたのも理由の1つです。今ではWEB会議ツールが普及したことで、距離が離れていても簡単にコミュニケーションを図ることが可能となりました。
また、対面でもオンラインでも、成約率に大きな影響はないという考え方も強まって来ており、より一層対面での営業活動が廃れつつあるのです。
■業務効率の向上のため
対面での営業活動に比べて、インサイドセールスでは、移動時間などの無駄を省いたうえでより多くの顧客にアプローチできるという点で、業務効率の向上に期待できます。人手不足の企業にとっては、営業人数を増やすことなくアプローチ数を増やすことが出来るので、多くの企業で導入され始めているのです。
インサイドセールスとフィールドセールスの担う役割
それぞれの特長は理解していただけたでしょうか?上記にもあるように、主流の営業活動としてフィールドセールスが多く取り入れられていますが、新たな手法であるインサイドセールスを導入し、分業スタイルを取り入れている企業も増えてきています。
ここでは、それぞれが担う役割について解説します。
インサイドセールスの役割とは?
インサイドセールスの目的は「見込み顧客の獲得」と「温度感の高い顧客から商談アポイントをもらうこと」だと言えます。電話やメールなどの非対面営業を通してアプローチし、まずは見込み顧客へと育成させることが求められます。
電話でのアプローチの中で重要なポイントを2点下記にまとめています。
■ファーストコンタクト
企業や個人に電話でのアプローチを行う際、まずは話を聞いてもらわないことには営業活動を始められません。営業経験がある方、営業を受けたことがある方であれば、「営業」は煙たがれることが多いことが分かるかと思います。まずは営業感を出し過ぎないように話を聞いてもらう時間・機会を作ってもらうことに注力することが必要と言えます。
例えば、企業にかける際はキーパーソンの名前を出すようにする、「サービスの限定モニターをお願いしたい」など特別感を出すといった方法が効果的です。
■相手の役に立つこと
商談のアポイントを獲得することが目的といっても、購入意欲の低い見込み顧客ばかりでは良い商談にも繋がりません。インサイドセールスにて、質の高いアポイントを獲得することで良い商談にも繋がる可能性が高くなります。ここでいう良質なアポイントとは、商品やサービスの購入を検討するタイミングと購買の理由が明確になっている状態のことを指します。
このようなアポイントを獲得するためには、顧客の本音を聞き出す必要があります。いきなり購買タイミングなどを聞いても不審がられてしまうため、まずは信頼できる人だと思ってもらう段階を踏まなければなりません。そのために、こちら側から役に立つ情報を提供することが効果的です。
例えば、「○○に役立つ資料を送付したい」という切り口から、受注の可能性を測れるようなヒアリングを行うといった手法が挙げられます。
フィールドセールスの役割とは?
フィールドセールスの目的は「受注を獲得すること」です。インサイドセールスから引き継いだ見込み顧客に対して、対面での提案や商談を行い、受注に繋げることが役割であると言えます。インサイドセールスとは違い、顧客と顔を合わせながらの営業になるので、より身なりや礼儀にも気を遣い必要があります。
受注を獲得するためのポイントを下記にまとめています。
■「買わない理由」がない状態にする
冒頭部分で、営業で重要なのは「買わない理由」であることを説明しました。受注を獲得するためには、この「買わない理由」がない状態を作ることが欠かせないのです。つまり、顧客が自社の商品やサービスを購入することで、今よりも便利になることをイメージさせるということです。
そのためには、まず顧客の課題を共通認識として設定しておくことが必要です。また、営業プロセスの中で疑問や不満を生ませない、疑問や不満が生じたらすぐに解消できるようなコミュニケーションも必要です。課題解決に向けて生じた疑問や不満を、最後に解消しようとすると信頼性がなくなってしまう可能性が高くなります。
プロセスごとに、顧客の合意を得ながら営業活動を進めていくことが重要なのです。
インサイドセールス・フィールドセールス、分業のメリットやポイントとは?
ここまで、それぞれの特長や担う役割について解説してきましたが、営業プロセスをインサイドセールス・フィールドセールスで分業することでどのようなメリットが生まれるのか、また分業を行う際にどのようなことが重要なのかをこの章で解説していきます。
分業することのメリット
■営業効率向上
インサイドセールスでは、顧客育成・アポイントの獲得を目的としています。フィールドセールスでは、提案や商談を通して成約に繋げることを目的としています。顧客へのアプローチから成約までのプロセスにおいて、それぞれ業務を分担することで、顧客育成に専念、商談・提案に専念というように一つ一つの業務に集中しやすくなります。
それによってそれぞれの業務効率が上がるだけでなく、成果率の向上にも期待が出来ます。
■網羅的にアプローチが出来る
営業担当者が営業プロセスすべてを担っている場合、接触している顧客が増えるほど、手が回らなくなってしまいがちです。それによって、適切なタイミングでアプローチが出来なかったり、確度の高い顧客を見逃してしまったりするケースが発生しやすくなります。
しかし、インサイドセールスを導入することによって顧客へのアプローチも網羅的に行うことができるとともに、確度の高い顧客を正確に捕まえることが可能となります。
つまり両者を分業することによって、営業効率を上げながらもアプローチの幅を広げ、徹底的にアプローチすることができるのです。
分業する際のポイント
■情報共有は綿密に行う
「顧客とどのような内容を話したか」「顧客が感じている課題は何か、自社に求めていることは何か」というような情報は商談時に必要不可欠なものであると言えます。もし、この情報共有が出来ていなかった場合、提案や商談の場面で語弊が生まれやすく、会社への信頼度を下げてしまうリスクが生まれます。
そこで管理ツールなどの使用やルールを決め、情報共有のマニュアル化を行うことが必要であると言えます。
■的確なタイミングで顧客を引き継ぐ
顧客情報を正確に共有するだけではなく、引き継ぎのタイミングにも配慮する必要があります。インサイドセールスでは、顧客の購買意欲や関心度が高まった状態でフィールドセールスに引き継ぐ必要があります。
良いアポイントの状態で引き継ぐためにも、顧客のニーズや反応を十分に確認し、関係構築を図る必要があります。
まとめ
インサイドセールス、フィールドセールスについての理解は深まったでしょうか?
コロナ禍によって、対面での営業手法だけでなく、非対面での営業活動も主流となってきた今、それらを連携させたハイブリッド式な営業を行うことで業務効率や成果の向上が期待できます。それぞれの役割を理解したうえで、新しい体制を作っていくことも一つの手かもしれません。